大麻中学校で出前授業の講師をしました

2月1日の定休日に鳴門市の大麻中学校の2年生の生徒さんに向けて「これからの社会で生きていくための力」をテーマに出前授業の講師をさせていただきました。

昨年9月の藍住中学校での出前授業の内容に最新のトピックを追加して、将来の職業選択に関してのヒントをお話ししました。

現役中学校2年生の生の声を聞ける貴重な機会なので、授業の感想は個人名を伏せて74名全員分送っていただきました。また、ご担当の先生との打合せの中で、大人しい生徒たちなので手を挙げての質問はでないかも知れないと心配されていたので、授業を受けたあとの感想を書く用紙に質問欄を設けたところ、たくさんの質問もいただき、一問一答で全部お答えしてメールで返答させていただきました。

質問に回答するのが楽しくて、気がついたらA4テキスト10ページのボリュームになって、自分のものの見方や価値観をこれだけのボリュームで語る機会もそうそうないなと思ったので、ブログに記録として残そうと思います。

ものの見方や価値観はこれからもどんどん変化していくと思いますが、現時点での私の人生観です。


大麻中学校2年生のみなさんへ

こんにちは。早いもので、先日の出前授業から3週間が経とうとしています。授業を受けて、みなさんに何か変化はあったでしょうか?少しでも良い影響があったなら嬉しいなと思います。

授業の感想や質問もたくさんありがとうございました。全てに目を通しました。74人それぞれに感じたこと、考えたことを書いてくださっていて、私もとても勉強になりました。

 感想の中で比較的多かった意見は、前半の難しい言葉がよく理解できなかった、眠くなってしまったというものです。授業の中でも説明しましたが、あの部分は大人でも?マークが頭にたくさん浮かんで理解が難しい部分なので想定の範囲ではあったのですが、その後どうでしょう?理解できなかった語句について、自分で調べてみたり、先生に質問してみたりした人はいますか?それは素晴らしい学びの姿勢ですね。でも、もしかしたら、もうその語句を忘れてしまっている人もいるかも知れませんね。もし忘れてしまっていても構いません。今後、ニュースや教材でその言葉が出てきた時に、そういえばそんな言葉を聞いたことがあるなと思い出してくれれば大丈夫です。今の時代、情報伝達のスピードの速さによって新しい語句がどんどん生まれています。しかし、定義や概念は日々移り変わっていて、すぐに意味や使われ方が変わったり、廃れてしまうものも少なくありません。語句の意味を正確に理解して自分の文脈で使えるようになることより大切なのは、新しいトレンドやトピックを追いかけて、どんどん情報をアップデートしていくことです。それが学びのその先にある「生きる力」に繋がります。教科書に書かれていることを正確に覚えることと、教科書に書かれていないことを自ら収集する姿勢の両方があると、みなさんの学びはもっとパワーアップできるんじゃないかと思います。ご参考まで。

あとは出前授業のスタイルについての意見も多かったです。出前授業の前に受けた就職ガイダンスがワークショップ形式だったので、それと比較された方もいたようです。講座にはいくつかスタイルがあって、講座を一方的に聞いて学習する「座学」、講師と参加者がやり取りをしながら講座を進める「セッション」、参加者が主体となって体験する「ワークショップ」などです。それぞれにメリット・デメリットがありテーマや講座の時間によってスタイルを選んだり、組み合わせたりします。今回の出前授業では限られた1時限の間になるべくたくさんの情報をみなさんに伝えることを優先したため、座学スタイルで行いました。もし、セッションやワークショップのスタイルで学んでみたいことがあれば、先生にリクエストしてみてくださいね。

前置きが長くなりましたが、ここからは質問欄に書いてくださった質問にお答えしていきます。質問の内容が似通ったものはまとめさせていただきました。

________________________________________

Q:スマホやインターネットがなかった時代は仕事を探すのに苦労したのですか?

A:直接ハローワークなどの相談窓口に直接行ったり、新聞や雑誌などに掲載されている求人見て仕事を探していました。(以前に比べて少なくなりましたが、新聞の求人広告欄やスーパーの入口などに設置されている無料の求人雑誌がいまでもあります。どんな仕事の求人が掲載されているか探してみてくださいね。)スマホやインターネットが普及するにつれて就職活動や求職活動が少しずつデジタルに置き換わってきましたが、仕事を探す仕組み自体は大きく変わっていません。

しかし、たくさんの求人があっても、そこに自分のしたい仕事があるかや、応募したからといって必ず採用される訳でもなく、人気の職業は競争率が高かったり、お給料は高いけど体力的や精神的にキツい仕事だったり、その職業に就くために経験や資格が必要だったり、いま何らかのお仕事をされている方はそういったハードルを越えてその職業に就いています。なので、そういう意味では仕事探しに苦労したことがない人はほとんどいないと思います。

そして仕事を探すときには、自分がこれまでに学んできたことや経験、得意なことや好きなこと、どんな気持ちや志を持って働くのか(社会や企業にとって自分がどのように役立つのか)、その対価としてのお給料は自分のその働きに見合ったものが得られるかどうか…などが、その仕事を選ぶかどうかに関連してくると私は思っているので、将来の職業選択のヒントの一つとして「ikigai」のチャートをみなさんにご紹介しました。

________________________________________

Q:どうやって自分のしたい仕事を見つけたのですか?

Q:どんな思いで今の仕事に就きましたか?

Q:なぜ綺羅星雑貨店をはじめたのですか?

A:学生から社会人になって、仕事をして結婚をして、子どもを産んで、子育てをして…とその時々で自分の人生のステージが変わってきました。それに合わせて自分の人生や仕事に対する考えも変化してきましたし、これから年を重ねることでまだ変化は続くと思います。だから、「自分のしたい仕事とは?」と今でもずっと考えています。

仕事の捉え方として私は2つあると思っていて、

一つは【ライフワーク=自分らしく人生を生きるための仕事。報酬のありなしはあまり関係ない。】私にとってはアート活動やNPOなどの社会貢献活動、積極的に自分の成長のためにセミナーやプログラムなどを受けることがこれにあたります。学校での出前授業などもここに含まれます。

もう一つは【ライスワーク=ライス(ご飯)を食べるための仕事。日々の生活を維持するためのお金を稼ぐ必要がある。】綺羅星雑貨店の仕事はどちらかというとこちらに分類されます。

ライスワークだけだった頃は我慢やストレスも多かったし、自分の人生これでいいのかな?と悩んだこともありましたが、今はこの2つの程よいバランスを意識することでとても楽になりました(まだ安定はしていませんけど…)。そしてこのバランスは、みなさんが難しいと感じられた言葉「ディーセントワーク」にも通ずる考え方です。【ディーセントワーク=働きがいのある人間らしい仕事。 働く人のあらゆる権利が守られ、生活が安定する仕事。】みなさんがどんな仕事に就くか考える時にこの考え方を持っておくと、選択が必要な場面で役に立つかもしれません。

________________________________________

Q:たくさんの仕事をしていて嫌になったことはありますか?

A:ありますー!締め切りに追われたり、個別には働きに見合った報酬がない仕事もあったり、人間関係ややこしかったり、調整や根回しが必要だったり、思い通りにいかなかったり…。でも、「自分らしい人生を送るために必要なこと」と広く高い視点で考えれば気持ちを切り替えることができます。

________________________________________

Q:大学を決める時になぜ早く親と話をしなかったのですか?

背景には複雑な家庭の事情もあったのですが、簡単に言うと小中高と成績は学年上位で両親から勉強についてあれこれ言われたことがなく、私は母親には県外の大学に進学したいことは三者面談などで伝えていたので、成績さえ伴えば自分の好きな大学に進むことができると思い込んでいました。一方父親は女だから県内の大学に進学するだろうと勝手に思い込んでいて、そのすれ違いにお互いが最終段階まで気付かなかったことが原因です。

________________________________________

Q:今までに「この仕事をやっていてよかった」と思ったことはありますか?それはどんな時ですか?

A:簡単に言えば自分が相手のニーズ(求めているもの、こと)を満たせたと実感できる反応をもらえた時です。

具体的には、販売員やバイヤーとしては、何を買えばいいのか分からない、迷っているお客様のお話をお聞きして、「ではこちらはいかかでしょうか?」とおすすめした商品に「そう!これこれ!」という反応をいただいた時。

講師やアドバイザーをしている時は、相手に新しい視点や気付きを与えることができた時や感想を聞かせていただけた時。

アーティストとしては作品を見てくださる人に何か心に響くものを与えられた時です。

________________________________________

Q:ユニクロを退職したとき後悔はなかったですか?

A:退職した当時はありました。実はユニクロを退職したのは長年のストレスからメンタルを崩したことが原因です。会社の規定でケガや病気をして療養が必要なときは最長半年間の休業が認められていますが、その期間内にまた働ける状態まで回復することができなかったので退職することになりました。当時の上司は長年会社に貢献してきた優秀な社員だから特例を…と本社に掛け合ってくれましたが、組織が大きければ大きいほど特例は難しいのです。ただこの退職があったからこそ、私は次のステップに進むことができたので今は後悔していません。

________________________________________

Q:広報業務で気をつけていることは?

A:綺羅星雑貨店の広報は主にSNSが中心なので、記事や投稿を見たお客様が「このお店に行ってみたいな」と思っていただけるような魅力的な発信をすることを心がけています。映える写真を撮ることはもちろん、一緒に添える文章にも言葉づかいや表現にも気を付けます。また、お店のイメージを崩さないように普段から自分自身の個人としての言動にも気をつけています。

________________________________________

Q:自営業をするのにどれくらい苦労しましたか?

自営業をすると決めて、計画して、実際にお店をオープンするのは比較的スムーズでした。しかし自営業の難しさはお店を開店してからで、お客様に来ていただけない店はすぐに潰れます。お店を潰さないようにこれからずっと苦労はすると思います。

________________________________________

Q:店をたてるときにどのくらいお金が必要でしたか?

A:コロナ禍真っ只中の開業だったので、なるべくコストを掛けずにお店を作りましたがそれでも数百万円はかかっています。もう少し規模の大きい店なら数千万ということもあります。

創業資金は自分が貯めたお金だけでなく、金融機関から借りたり、国や県、市町村などの補助金や助成金を利用することもあります。お金の借り方や制度の仕組み、利用の仕方などの勉強も事前に必要です。

________________________________________

Q:「多くの仕事がAIやロボットに置き換わるなか、人間に求められる力も変化する」をありましたが、将来どんな力が求められると思いますか?

Q:AIが普及する中で人間に求められるのは具体的にどんな力ですか?

Q:今の自分たちが働いていくために必要な力とは何ですか?

A:仕事や職業によって違いがある思いますが、共通して言えるのはこの4つかなと思います。

① 自ら問いを立てる力(課題発見力)

みんなが当たり前だと思っていることに対して「なぜそうなっているのか?」、「(もっと良くするために)何か別の方法はないのか?」など常に疑問を持って常識や習慣、仕組みや制度を問い直す力。

② ロジカルシンキング(論理的思考)

直感や感覚的に頼るのではなく、物事を筋道立て考えて矛盾や破綻がないように自分の考えを組み立てたり、結論を出す力。

③ 対話力

「話す」と「聞く」の両方の力を駆使して意見や考え方の違う人と、お互いの意思を一致させる着地点を見つけられる力。合意形成力とも言います。人間同士だけでなく、いま最先端で研究が進んでいるジェネレーティブ(ジェネラティブ)AIの性能がもっと上がれば、将来的にAIとの対話が必要になってくるかも…?

④ 寛容さ

広い心を持って自分と異なる他者を受け入れる力。正義と正義、正論と正論のぶつかり合いは争いしか生みません。これも人格や個性を持ったAIが誕生するようになると相手は人間に限らないかも…?

________________________________________

Q:P5の「単なる職業の選択は意味がなくなる」に対して意味のある選択とは?

A:意味のある選択は、仕事や人生に対する考え方が人それぞれ違うので一概には言えませんが、これから将来のことを考えるみなさんにとって意味のある選択をするために必要なのは、会社や組織に雇われることだけが仕事ではないと知っておくことと、自分は自分の人生に何を求めるのか?何者になりたいのか?「ikigai」を自問し続けることかなと思います。

________________________________________

Q:将来について考えたいけど何からすればいいか分かりません。稼ぎたいけど将来のことはノープランってヤバいですか?

A:大丈夫です。フィーリングでノープランな人生も自由でいいです。周りが「ノープランはヤバくない?」って言ってもそんな他人の評価は関係ありません。人から何か言われて「しなければならない」と思ってしまった瞬間、人生は途端につまらないものになると私は思います。人生は一直線でも一本道でもありません。王道もなければショートカットも巻き戻しもありません。人それぞれスタートラインも進むスピードも違います。

いま何をすればいいか分からないということは、裏を返せば現状にまぁまぁ満足していて考える必要がない状態ということです。出前授業の内容をなぞって一つアドバイスするとすれば、「ikigai」チャートのどれかに極振りしてバランスを一度崩してみるのもいいかなと思います。でも、好きなこと、得意なこと、社会の役に立つことのどれかに全力投球はできても、お金を稼ぐことは中学生にはまだ無理だと思うかもしれませんが、15歳以上で保護者の同意があれば実は起業することもできるので、実際に中学生社長として起業したという事例もあります。中学生社長を目指すのもアリですよ。

________________________________________

Q:得意はどうやって見つけたらいいですか?

A:得意は自分の長所や強みとも言い換えることができます。でも、そういうのってなかなか自分では気付かなかったり、自分には無いような気がしたり…。

得意を探すヒントとしては、どんな小さなことでもいいので、できるだけたくさん人から褒められたことを思い出してみてください。それが得意の種になります。それを育ててみるのはどうでしょう?

褒められたことが思い出せない時は、周りの人に自分のいいところを聞いてみましょう。もしかすると自分は短所や欠点だと思っているところも、実は人から見れば長所や強みだったりします。自分とは違う角度から他人を通じて自分と向き合うことで、そこにも種を見つけることができると思います。

そして多分みんな自分の得意を探していると思うので、人を褒めてその人の得意を見つけるお手伝いもしてあげてくださいね。

________________________________________

Q:「世界が求めていることは何か?」とありましたが、それはどんなふうに見つけることができますか?

A:まずは、前の質問の「将来どんな力が求められるか?」で紹介した自ら問いを立てる力(課題発見力)を鍛えることだと思います。いきなり世界から考え始めるとスケールが大きくて想像力が追いつかないと思うので、少しスケールダウンして考えます。スタートは「私がいま困っていること」です。その困っていることは仲の良い友だちにも共通することですか?クラス単位でもその困りごとを抱えている人はいますか?学校単位では?鳴門市にある中学校単位では…?

みなさんの教室にはエアコンが設置されていますか?私が中学生の頃は職員室にしかありませんでした。夏場は教室が暑過ぎて勉強に集中できないと私は思っていました。これは私の友だちも、クラスメイトも、全校生徒のほとんどが感じていたことでしたが、文句は言えても、それをどうにかできるとは思っていませんでした。でもそれは自分の通っている学校だけ?いや、徳島県、更に全国の学校に通う子どもたちがみんな思っていることなんじゃないか?なんで教室にエアコンないの?子どもたちが勉強に集中するために全国の学校の教室にあった方がいいんじゃないの?と疑問に思った人たちが問題提起をして議論をしたおかげで、全国の学校にクーラーが設置されるようになり、困りごとが一つ解決しました。

そしてそれは社会課題だけでなく、仕事や職業についてもそうです。仕事や職業は生活を送る上で自分ではできないことに対価を払って他の人にしてもらい、自分ができることで他の人から対価をもらうことです。自分ではケガや病気を治せないからお医者さんに診てもらう。自分で家を建てられないから大工さんに建ててもらう。自分だけでは勉強ができないから先生に教えてもらう。自分で野菜を育てられないから農家さんに作ってもらって、農家さんは自分では売れないからそれをお店で売ってもらう。

例え話が長くなりましたが、みんなに共通する困りごとを解決できるように枠組みや仕組みを作ることが「世界が求めていることは何か?」を考えることです。しかし、時代が大きく変化しているいま、これまでに作られた枠組みや仕組みが上手く機能しなくなってきているものもたくさん出てきました。それが時には会社の倒産や出前授業で紹介した大量解雇として表面化しています。既存の枠組みや仕組みの中に入る就職を目指すのではなく、みなさん自身が新しい枠組みや仕組みを作る人になって自分の仕事を見つけて欲しいなと思います。

________________________________________

Q:将来について考えるとき、一番苦労したことは何ですか?

A:今でも悩んだり、苦労したりしていますが、もし今の自分が中学2年生だった自分に声を掛けるとしたら「もっと自分に自信を持って!もっと自分の可能性を信じて!」です。

でも簡単に自信なんて生まれないし、誰かが自分の自信を保証してくれる訳でもないし、私もぐるぐる悩んでいます。でも振り返ったらそこに自分の歩いてきた道ができていると思って、悩みながら、学びながら進んでいます。

________________________________________

Q:私はやりたい事、興味のある事がたくさんあるし、方向性がばらばらなんですが、何かアドバイスをもらえたら嬉しいです。

A:私もやりたい事、興味のある事がたくさんあって、方向性もバラバラなのできっと気が合いますね。いまあなたの心が求めているのは、何か一つに縛られずに好奇心を昂ぶらせて見聞を広げることなんだと思います。無理矢理一つに絞ったり、方向性を定めなくて大丈夫です。その自由さが新機軸を生み出す力になるかも知れません。どんどん行きましょう。ちなみに私は45年生きていてもまだまだたくさん自分が知らないことがあるなぁと思うので好奇心や新しいことへの興味が尽きません。

そして一見ばらばらに見える事柄も、経験として積み重なれば何かまとまりや方向性が見えてくることもあります。そしてそれは誰にも真似できない、あなただけの唯一無二の個性になると思います。

________________________________________

Q:2030年にSDGsは達成されていると思いますか?(自分は一部は達成されていると思うが、全部達成するのには時間が足りないと思っている)

A:掲げた目標や指標に対して、世界中でさまざまな取り組みが行われていますが、17の目標の相関関係は複雑で、このポイントを上げると、あのポイントが下がるなど、全部を100点にすることはかなり難しいのではないかと私も考えています。

しかし、まず自分の身の回りにある問題に気付くこと、そして「自分ごと」として正解のない問題をじっくり考え続けること、人の意見を聞いてみて更に考えを深めることの3つの基本姿勢が大切で、こういった姿勢で地球規模の問題を考えたり、取り組んだりする人が増えることに意味があるのではと思います。

くすのきしげのり先生の言葉をお借りするなら、世界にとって私は80億分の1の存在ですが、今日私が幸せな気分で過ごしたら世界は80億分の1幸せになる。もし私が幸せな気分を誰かに分けてあげることができたら80億分の2幸せになる。そうやって自分の住むまちや地域を良くしようと考えて行動する人の輪が広がっていけば達成に向けてのスピードが加速すると思います。私の出前授業をせ先生を含めて80名の方に聞いていただいたので、80億分の80世界を良い方向に動かせていたら嬉しいなと思います。

________________________________________

Q:仕事をしていて中学で習ったことで役に立ったことはありますか?

A:私も中学生の頃、中学での勉強は大人になって何の役に立つのだろう?と疑問を持っていました。大人の中には役に立っていないと言う人もいるかも知れませんが、私は断言します。中学校で習うことめちゃくちゃ大事。それぞれの教科はもちろん、人間関係、部活動、委員会活動など、大人の社会に仲間入りする前の予行演習と、自分の人生を自分で選択していくための価値観や判断基準を培う大切な学びの期間だったと思います。

出前授業の資料で配付した「雑貨店の仕事」を例にざっくり説明すると

・接客応対には国語や外国語(会話やコミュニケーションのスキル、知識)、

・金銭授受には数学や技術(計算力、レジ操作など機械を扱う知識)、

・清掃や設備管理には技術・家庭の知識(時には数学や理科も)、

・経費管理には数学と社会(法令の理解、税の仕組みや、手続きに関する知識)、

・広報業務には教科の範囲を超えた総合力、

・自分が健康で働くためには保健体育と社会(健康維持と労働に関する法令や知識)

そして全ての業務のベースにはモラルやマナーなどの道徳が必要です。

生きる力=ものごとを体系化する力(個別の知識、情報、仕組みなどを関連付けて大きなまとまりとしてとらえる力)です。生きる力を付けていくために、中学の勉強は教科に分けられた人間社会の知識や仕組みの基礎を学ぶ場、高校はさらにそれを高度化し、大学はそれを専門化する場だと私は考えています。

勉強をコツコツ積み重ねていくことは時には退屈で、投げ出したくなることもあるかも知れませんが、自分の将来の目標や目指す姿を描きながら、遊びも勉強も全力で楽しんでください。

ちなみに私が中学生の時に得意だった科目は国語、音楽、美術(美術部で部長を務めました)。苦手だったのは数学です…。

________________________________________

Q:女性リーダーシッププログラムではどんなことをしましたか?

A:取り扱うテーマや内容によってさまざまなやり方がありますが、共通しているのは下記のような内容です。

・いま自分を取り巻く社会の状況はどうなっているのか?(現状の把握と分析)

・その社会の中で自分の立ち位置はどこか?(自己理解と分析)

・理想的な状態と現状のギャップの確認(課題発見)

・ギャップが生まれている原因は何か?それをどう解消するか?(アクションプラン立案)

・アクションプランを実行するためにどうやって人を巻き込むか?(プレゼンテーション)

その中で人間の心理や行動について学んだり、世界情勢や政治、経済、福祉、教育などのトピックも学びます。またいろいろな人の意見を聞くためにミーティングや意見交換をしたり視察に行ったりもしました。また自分のビジョンを理解してもらうために人前で自分の考えや意見を発表するスピーチやプレゼンテーションなどのトレーニングもします。

________________________________________

Q:プログラムを受けることによるメリットは?

A:自分の知らなかったことを知り、見聞を広げて自分の考えを深め、より良い自分の生き方や、より良い社会のあり方を考え続ける習慣が付くことです。そしてその先には同じような目的意識を持った仲間との出会いや、全く違う考えを持った人と意見を交わし、互いの立場を理解できるようになる追加効果もあります。

________________________________________

Q:外国で大変だったことや、日本では学べないようなことはありましたか?

A:ドイツの研修に行った時はコロナ禍でドイツへの直行便が運行休止となり、関空から中東のドバイ空港を経由してドイツのハンブルク空港到着になったので、行きも帰りも30時間くらいかかったのは体力的に少し大変でした。

また、ドイツには閉店法という法律があり、平日と土曜日はディナーやお酒を楽しむ店以外は全て午後8時で閉店、日曜祝日は観光地のお土産店や飲食店など開店の許可があるお店以外は全て休業すると決まっています。そのため年中無休や24時間営業の店はありません。日本の生活と比べると不便なような気もしましたが、働く時間とプライベートの時間がちゃんと区切られているのは働く人にとってはとても合理的だなと思いました。

私がドイツで一番学びたいと思っていたのはジェンダーギャップ指数(経済、教育、健康、政治の4つの分野について0が完全不平等、1が完全平等を示す男女間の格差を表す指数。毎年国ごとのランキングが発表されている。)についてです。日本は主要先進国最下位の116位、ドイツは10位(主要先進国の中では1位)と大きな開きがあるので、ジェンダーギャップ解消に対して国や企業はどんな先進的な取り組みをしているのか直接聞きたいと思っていました。しかし現地の研修でドイツの女性経営者やリーダーの方と意見交換するなかで、女性首相や女性議員などの多さで政治分野でのスコアが高いためにランキングは上位だが、ドイツも日本と同じように昔から性別役割分担意識(男性は外で働く、女性は家事や子育て)が強く、経済面や働く女性の環境改善はまだまだこれからという話を聞いてびっくりしました。日本でランキングの分析だけ読んでいては知り得なかったことなのでとても勉強になりました。

在ハンブルク総領事の加藤喜久子さんと意見交換をさせていただいたり、ベルリン在住の日本人通訳の方とドイツでの日常生活について移動中におしゃべりしたり、リューネブルク市の女性経営者との朝食会議など、ふだん出会えないような方と会ってお話しできたのもとても貴重な経験になりました。

ドイツでの研修については何時間でも話せるくらいまだまだ話題があるのですが、長くなるのでここまでにしておきます。またどこかでお話しする機会があればいいなと思っています。

________________________________________

Q:女性が積極的に働く社会はどんな可能性が生まれるのか?

A:単純に言えば、これまで才能を認められなかったり、その才能を発揮する機会に恵まれなかった人にもチャンスが生まれ、多様性のある社会の実現に一歩近づくのではないかと思います。

日本では平日土日祝関係なく、朝から晩まで長時間働ける人が社会人として優秀であり、そうあるべきだという考え方が今でも根強く残っています。しかしプライベートを犠牲にして長時間働くことが本当に幸せだろうか?それは人間らしい生き方だろうか?長時間働くことができない人は優秀ではないのか?という疑問を持つ人が増え、いまその価値観が変わろうとしています。

女性が積極的に働ける社会の実現が第一歩となって、性別年齢、障がいの有無に関係なく、誰もが活躍できる社会に繋がればいいなと思います。

________________________________________

Q:メンタルが落ちたときはどんなことをしていますか?(そのときどのような言葉をかけてくれたら嬉しいですか?)

A:私の場合はヘッドフォンで音楽を聴きながらひたすら本を読む。あと歌をうたうのが好きなので車での移動中や一人カラオケに行って上手に歌うのが難しい曲(今ならウタカタララバイやTot Musicaとか)をひたすら練習する。何か他のことに集中することで頭から離れないネガティブな思考を一度 強制的にシャットアウトする感じです。

基本性格がネガティブ陰キャなので、メンタルが落ちているときにポジティブな声掛けは私には逆効果で、ネガティブな部分も個性と受け止めて笑ってくれる人に安心感を抱きます。いろいろややこしい性格なのであまり参考にならないかも知れないです。ごめんなさい。

________________________________________

Q:挑戦することはこわくないのか?

Q:どうしたら失敗が怖くなくなりますか?マイナス思考をなくすためにはどうすればいいですか?

A:失敗の恐怖については、アメリカの大学で失敗学や経営学が専門の教授から「その失敗から何を学んだかを自分の中で整理と理解ができればそれは次の段階に進むステップになる。失敗を恐れて何もできない、しないことが失敗である。」と教わりました。日本人は失敗しない人=優れた人だと感じてしまう人が多い傾向にありますが、世界的なスタンダードでは失敗しない人=自分の心地よい環境から出るのを恐れる臆病者と評価されるのだそうです。

また、心理学の教授から教えていただいたことですが、ネガティブ思考やマイナス思考は、命を脅かす危険(野生動物に襲われる、飢えや環境によるダメージ、病気やケガなど)を避けるための人間の生存本能の一部なので無理になくさなくていいそうです。ポジティブにならなくては!と自分にプレッシャーを掛けるのが一番良くないので「ネガティブでもいい」と一度受け入れることが大切とのことです。ネガティブ陰キャの私はその言葉を聞いて少し考え方が変わりとても楽になりました。

________________________________________

Q:世の中の価値観が変わっている中で心がけていることはありますか?

A:どんなに気をつけていても自分の中にアンコンシャスバイアス(無意識の偏見や思い込み。女性に力仕事は無理、あの人が言うことだから間違いない、血液型や星座でその人の性格を判断するなど)があると常に意識をしています。人間が物事を効率的に処理するための脳の働きの一部なので無意識の偏見は誰にでもあり、どんなに努力しても完全に消すことはできません。先入観に捕らわれず、さまざまな角度から客観的に物事を判断できるようトレーニングをしています。

________________________________________

Q:先生にとって生きがいは何ですか?

A:私にとっての生きがいは、「誰もがリーダーになれる徳島(社会)を作ること」です。

誰もが自分らしく生きることができる社会の実現のためには、多様な人たちがそれぞれの立場や考えをオープンにしてもっともっと議論することが必要です。みなさんが「リーダー」と聞いて想像するようなカリスマ性があって力強く人々を引っ張っていくパワフルなリーダー像を打ち砕いて、周囲に良い影響を与える存在がリーダーであり、誰でもリーダーになることができる、私もリーダーになれるという勇気を与える活動をして多様なリーダーが生まれることが私の願いです。出前授業や講演の依頼は、その活動を広げるチャンスなので可能な限りお受けしています。今回の出前授業でみなさんに少しでもその気持ちや考えが伝わっていればいいなと思っています。

________________________________________

Q:今後、何をする予定ですか?

A:雑貨店の仕事の新たなチャレンジとしては、4月に大阪で開催されるドールイベントに出展をして県外での知名度をアップさせようと計画しています。

NPOの活動は4月から新しい年度に入るので、来年度どのような活動をするのかこれから計画を立てます。

個人としては、ICT人材育成講座を受けたので資格取得を目指すのと、今年はスケジュールの都合がつかず応募見送った「チャレンジとくしま芸術祭」に応募して、来年は文化の森の近代美術館で自分の作品を展示できたらいいなと思っています。

また、つい先日 新しいビジネスウェアのあり方を考える「シン・シゴト服ラボ」というソーシャルコミュニティに入会を許可されたので、ファッション業界で働いてきた経験も生かしてプロジェクトに参加できたら面白いなとワクワクしています。

今年も好奇心の赴くままいろいろなことにチャレンジします。そしてこの経験をいろいろな方たちの前でまたお話しさせていただく機会もあれば嬉しいなと思います。

________________________________________

最後に

みなさんがこれから将来を考えたり、進路選択をする時にたくさん悩むと思います。

時にはくじけそうになったり、自分の努力に対して心ない言葉を掛けられて傷付くこともあるかも知れません。でも大丈夫です。自分たちの社会を良くしよう、次世代を担う子どもたちの幸せを考えて活動している大人たちはたくさんいます。ご両親や学校の先生をはじめ、人生の先輩たちがきっと力になってくれます。

自立とは「何でも自分でできること」ではなく、「自分ができることとできないことを理解して、できないことには人に助けてと言えること」だと私は思います。何度も言いますが、恐れず勇気を持ってチャレンジしてください。そして未来に希望を持ってください。みなさんが未来に希望が持てる社会になるように私も頑張ります!

2023年2月20日

綺羅星雑貨店 正治真紀



キラボシザッカテン(綺羅星雑貨店)-Tokushima

徳島県藍住町のドールと雑貨のセレクトショップ 徳島県板野郡藍住町奥野字和田80 営業時間:13時~18時 定休日:水曜日/日曜日(その他臨時休有) 駐車場3台完備 ・徳島県あったかビジネス事業計画/認定番号385 ・徳島県公安委員会許可 道具商/第801050000627号

0コメント

  • 1000 / 1000